映画 『エルヴィス』が日本で大ヒットしています。アメリカの伝説的な歌手エルヴィス・プレスリーを、自身も歌手であるオースティン・バトラーが熱演……映画館で観るとライブのような盛り上がりを体感できるのも魅力です。
ロックンロールの「キング」と呼ばれ、ミュージシャンの王様でもあるエルヴィスですが、彼の音楽には黒人文化が色濃く影響しているのをご存知でしたか? 今回はそんなエルヴィスと黒人文化がどう交わっていったのかを見ていきましょう。
数字でたどるエルヴィスの“スゴい記録”
まずはエルヴィスの功績を数字で見てみましょう。
▶︎最も成功したソロアーティスト(ギネスブック)
▶︎全米ナンバーワンシングル18曲(歴代3位)
▶︎全英ナンバーワンシングル18曲(歴代1位)
▶︎ビルボードTop100へのエントリー回数151回(歴代1位)
▶︎1日で最もレコードを売ったアーティスト(エルヴィス死去の翌日に2,000万枚以上)
▶︎世界で最もファンクラブが多いアーティスト(625団体)
▶︎世界で最も訪問される墓(アメリカ グレイスランドで、年間約70万人)
楽曲の人気はもとより、ファンクラブやお墓への訪問者数の記録など、現在まで数多くの人々に愛されていることがよくわかります。
ロックンロールの原点は幼少期に聴いたゴスペル
エルヴィスは1935年にアメリカ、ミシシッピー州の貧しい農家に生まれます。黒人居住区の近くに住んでいて、白人と黒人の教会音楽を聞きながら育ち、ゴスペルのリズムとメロディが彼の音楽の原点となりました。
彼は歌手としてデビューした頃から黒人音楽に影響を受けた楽曲を手掛け、黒人音楽であったブルースやリズムアンドブルースに白人音楽のカントリーアンドウェスタンを融合しながらロックンロールという新しい音楽ジャンルを作り上げました。
彼に音楽的影響を与えたアーティストはB.B.キング(B.B.King)、ビッグ・ママ・ソーントン(Big Mama Thornton)、リトル・リチャード(Little Richard)などの黒人アーティスト達です。当時のアメリカは人種隔離政策に基づいて学校やアパート、ホテル、水飲み場に至るまで白人と黒人が分けられていました。そんな時代に黒人音楽を取り入れたエルヴィスの音楽は白人からの批判の的となりましたが、エルヴィスは自身の音楽を貫き続けます。
キング牧師の“I have a dream.”とエルヴィスの“If I Can Dream”
エルヴィスは黒人指導者である牧師、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Jr.)からも大きな影響を受けました。
キング牧師と言えば、“I have a dream”(私には夢がある)という演説が有名です。英語の教科書で読んだという人も多いのではないでしょうか。1963年にワシントンのリンカーン記念堂で行った以下のスピーチです。
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I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed “We hold these truths to be self-evident that all men are created equal.”
(私には夢がある。いつの日かこの国が立ち上がり、全ての人が平等に生まれてきたという自明の真実を信条とすることを実現することを)
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
(私には夢がある。いつの日かジョージアの赤い丘で、奴隷だった人々の子どもが支配者だった者の子供と兄弟としてテーブルに付くことを)
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キング牧師は1968年4月に凶弾に倒れました。その年の12月、年末スペシャル番組のエンディング曲として、エルヴィスは“If I Can Dream”(明日への願い)という、キング牧師の演説に応える曲を歌います。すべての人々が手を取り合って生きていける平和な世界を求める歌詞は、多くの視聴者の心に響きました。
実は、エルヴィスのマネージャーは年末番組なのでクリスマスソングを歌うことを主張していました。しかし、エルヴィスはこの曲を歌うことにこだわりました。結果的に番組視聴率は42%、瞬間視聴率は70%となり、アメリカ全土に多大な影響を与えました。
日本でライブをする夢は叶わなかった
エルヴィスは日本を含む世界各地でライブをすることを希望していしたが、マネージャーの意向で叶いませんでした。日本に来ていたらビートルズ来日のような歴史的なイベントになっていたかもしれません。
小泉元総理大臣はエルヴィスの大ファンで、アメリカ訪問の際、当時のブッシュ大統領から、「米議会での演説」と「エルヴィスのお墓があるグレイスランドの訪問」を提案され、迷わずグレイスランドを選んだ、というのは有名なエピソードです。
音楽を通してアメリカ文化に今も影響を与え続けているエルヴィスについてオンライン英会話Camblyのネイティブ講師に感想を聞いてみてはどうでしょう。いろいろな逸話を聞けるよい機会になるかもしれませんよ!